さいとうかこみ さんの本のコーナーより

研究員コーナーには、それぞれが持ち寄った本が置かれています。本日はさいとうかこみさんからコメントをいただきました。


〝一番下の本は、大好きな内田百閒の童話に、挿絵が版画家の谷中安規(たになかやすのり)というもの。昭和9年が初版、ということですが、こちらはその復刻版で、古本屋さんにあったのを、え、こんなのあるんだー!、と驚き喜んで購入したものです。百閒の童話自体がふわふわとつかみどころが無いようで、それがまた良いのですが、その文章と同等か、それ以上と言ってもよいぐらいの存在感で、版画の挿絵がページ全体を圧倒しています。

真ん中の絵本は、知人からいただいた古い絵本です。

一番上の本は、ワタリウム美術館の入り口付近にさらりと置いてあったのですが、まずは紙の美しさ(ファブリアーノだったかな?)に惹かれました。イタリア語なので、タイトルの意味も知らないままだったのですが、先ほど調べたら、表紙にある「Alda Merini」は、著名なイタリアの詩人の名前らしいです。でも本文は、ややカリカチュア化された人物の顔の銅版画が続いているだけ。内容はいまだにナゾなのですが、紙の手触りと、銅板で刷った紙を折って糸で簡単に綴じただけ、という簡素な佇まいが気に入っています。

これらの本たちは、いつも本棚のわかりやすい場所にあって、風景のようになじんでいます。そうして時折なんとなく抜き出して、パラパラと眺めてみる。何かを急に発見!・・と、いうよりは、なんとなく酸素を補給してくれるような。そんな役割も、本にはあると思うのです。(さいとう)〟


さいとうかこみ さんについてはこちらを。
作品はTOMOSONLINEでも取り扱っています。

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