さいとうかこみ Ohayou, Ohayou 1

〝展示で、描いた絵を額装して壁にかける、絵が引き立って素敵に見えるし、埃や汚れから守ってくれる・・。確かにそうなのですが、絵の前に立つと作品と自分の間に膜があって隔てられているような、遠く離されているような、そんなもどかしい気持ちになることがよくあります。

なるべくなら絵がむき出しのまま、触れられるぐらいのところで独立し、人に会っておしゃべりするように、相対することはできないだろうか・・というのが常々思っていたことでした。

本は、置いてある姿は独立した一つのオブジェですが、手に取ってページを開いていくことで、目の前にあるものとは全く違った風景が自分の中に展開し、一瞬で別世界へ飛んでいくことのできるメディアです。掌に収まる大きさでよいし、とりあえず何枚かの紙に何かの情報、文字や画像を書き込んで、バラバラにならないよう、糸や糊で一辺を綴じてしまえば、出来上がり。好きな時に取り出して、開いたページを閉じるまで、思う存分ながめられます。

絵を描いて、その紙を真ん中で折って、また絵を描いて・・つないでいったら本になる。それを手に取って見てもらえれば、よいのではないか。・・というのが今回の制作の基本でした。
本の形にする、というのは、原画をスキャンしてその画像をプリントし、ページ立てて冊子にする、という方法では以前にも行ってきたことでした。ですが、原画の持つ紙の美しさ、色彩の発色は、どうしても伝えきることはできません。(もちろん、プリントして作る冊子の良さも、あげればたくさんあります)

今回の制作では、<ひと見開き/左右のページ>に絵を1点ずつ、左右どちらかの絵は切り抜いて地のページから少しだけ浮かせる、というやり方を決めて作りました。平面の絵だけれど、少しだけメリハリと、物質感を持たせたい気分がありました。言葉は、無くても良いかも?・・と初め思ったのですが、言葉があった方が、よりページを開き進みやすいのでは、という考えになりました。
でも、言葉自体は日常の、何気ない、誰でもが使う挨拶のような言葉で。かえってそのほうが、見る人の思いで、いろいろなイメージを広げられるのでは・・と思ったのです。
この作品にある絵は、1枚で壁面を飾るような密度は無いかもしれません。ですが、それが連続し、言葉がページを開いていくことで、この本を手に取る人の中に、なにかしらのイメージ(1日の初めに、楽しく挨拶をしたくなるような)が広がったら、いいな、と思っています。(さいとう)


さいとうかこみ さんの本『Ohayou, Ohayou 1Ohayou, Ohayou 2Ohayou, Ohayou 3』はTOMOSONLINEでも紹介中です。

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