和田祐子さんの本のコーナーより

研究員コーナーには、それぞれが持ち寄った本が置かれています。その中から数冊を選んで紹介してもらいました。こちらは和田祐子さんの本です。

〝 LINES; A BRIEF HISTORY  著者:Tim Ingold
(後に左右社から「ラインズ、線の文化史」翻訳本も出ています。)帯に「面白いことはすべて、道の途中で起こる。あなたがどこにいようと、そこからどこかもっと先に行けるのだから。」大きく影響を受けたカリグラファのワークショップで紹介された一冊。

二冊目は、

Rags, Rabbit Skins and Invisible Watermarks; 750 years of papermaking in Fabriano.
旅の途中で見つけた一冊。750年記念に出版された、ファブリアーノ紙の歴史や、13世紀以降この紙を愛した人物たち(ブルーノ・ムナーリ、ジョージア・オキーフなど)についての物語も紹介された本。装丁には、様々な紙が使われていて、手触りもとても魅力的。(和田)〟

和田祐子さんについてはこちらを。
作品はTOMOSONLINEでも取り扱っています。

高橋洋子『《リボンのてほどき》VoL3 ふくろふの空腹ガリヴァー旅行記』

俳句とテキストとドローイングと呪文が重層的に重なりあう〈試〉み、高橋洋子さんのシリーズ《リボンのてほどき》は、表紙にFabrianoが使われ細いリボンで綴じられています。縦糸と横糸として編まれた言葉や絵の様々なイメージが、「綴じる」ことによって一つの不思議なイメージを立ち上がらせます。


高橋洋子さんの<リボンのてほどき>シリーズ3作品の詳細については下記リンクとGallery2からご覧ください。
VoL3 ふくろふの空腹ガリヴァー旅行記」「VoL4 水族館暗くて花すももふゆる」「VoL5 ぶだうづる夜のラジオに絡みつく

TOMOSONLINEでも好評取り扱い中です。

今日から展覧会後期が始まりました。厚く育った<育てる本>がギャラリーに登場。

思ったより長〜〜く育った本の展示風景。全部で60作品。続編ありますので乞うご期待!

大古瀬和美 さんの本のコーナーより

研究員コーナーにある本について、大古瀬和美さんからコメントをいただきました。


〝現代の薬には副作用がつきものですが私たちのご先祖さまは病気や怪我をどのように治していたんでしょう? 今の文明が栄える前の御自愛のやり方に興味が湧いたら、この2つの本に出会いました。『家庭でできる自然治療/東城百合子著』『アナスタシアシリーズ(現在8巻まで刊行)/ウラジーミル・メグレ著』

農薬を全く使わない庭では、たくさんの生物が蠢き、虫や鳥に齧られながら薬草、ハーブ等がたくましく育っています。蚊に刺されたらドクダミの葉を揉んで当てると一瞬で痒みが消えます。野生の枇杷葉を肝腎に当て平熱が高くなりました。ギックリ腰も、これが速攻で効きました。咳喘息はホーリーバジルで。

恩人のようなこの2つの本とご近所、知人の臨床結果のフィードバックで20年病院に行かないで暮らせています。ありがたや。(大古瀬)〟


大古瀬和美 さんについてはこちらを。
作品はTOMOSONLINEでも取り扱っています。

足立涼子さん『How should I your true love know?』

〝花びらの形に沿って文字が印字されているこの作品。狂気に陥った『ハムレット』のオフィーリアが、不思議な軽やかさで歌う歌詞を使っています。訳はこんな風。

〝恋人と別の人、どうやって見分けるの? 貝殻付の帽子と杖 それからサンダル靴でわかります……彼は死にました 死んだのです 頭は草で覆われて 踵には石………覆いは雪山のよう 美しい花々で覆われて……〟

この作品にちなんで、研究員の本の紹介コーナーに1枚だけCDを置いていました。メゾソプラノ歌手、波多野睦美さんの『オフィーリアの歌』。本のコーナー故にそれは<こっそり>のつもりだったのですが、ある来場者のお目に留まり手紙をいただくに至りました。手紙には高橋悠治さんと収録された別のCDが紹介されており、モンポウを演目にした氏のコンサートへ出かけたことがあったので聴いてみると、はたしてモンポウありクルト・ヴァイルやケージのオフィーリアあり、軽やかさと真摯で静謐な熱感が共存する好みの音楽を聴くことができ、お手紙いただいた方に感謝した次第です。
ちなみに狂気の中で歌われる [オフィーリアの歌の軽やかさ] は、この状況下に開かれた今回の展覧会にどこか似ていないこともないと<こっそり>思っています。(足立)

*オフィーリアの歌詞の訳(抜粋)は波多野睦美さんのCD『オフィーリアの歌』の訳を参考にしつつDeepLを利用しながら意訳しました(足立)。

How should I your true love know?』と合わせて、足立涼子さんの本『ドイツの図書館』『いろがみえほん』はTOMOSONLINEでもご紹介中です。

締め切り後の<育てる本>、こんなに厚くなりました。
7/11の<育てる本>

さいとうかこみ さんの本のコーナーより

研究員コーナーには、それぞれが持ち寄った本が置かれています。本日はさいとうかこみさんからコメントをいただきました。


〝一番下の本は、大好きな内田百閒の童話に、挿絵が版画家の谷中安規(たになかやすのり)というもの。昭和9年が初版、ということですが、こちらはその復刻版で、古本屋さんにあったのを、え、こんなのあるんだー!、と驚き喜んで購入したものです。百閒の童話自体がふわふわとつかみどころが無いようで、それがまた良いのですが、その文章と同等か、それ以上と言ってもよいぐらいの存在感で、版画の挿絵がページ全体を圧倒しています。

真ん中の絵本は、知人からいただいた古い絵本です。

一番上の本は、ワタリウム美術館の入り口付近にさらりと置いてあったのですが、まずは紙の美しさ(ファブリアーノだったかな?)に惹かれました。イタリア語なので、タイトルの意味も知らないままだったのですが、先ほど調べたら、表紙にある「Alda Merini」は、著名なイタリアの詩人の名前らしいです。でも本文は、ややカリカチュア化された人物の顔の銅版画が続いているだけ。内容はいまだにナゾなのですが、紙の手触りと、銅板で刷った紙を折って糸で簡単に綴じただけ、という簡素な佇まいが気に入っています。

これらの本たちは、いつも本棚のわかりやすい場所にあって、風景のようになじんでいます。そうして時折なんとなく抜き出して、パラパラと眺めてみる。何かを急に発見!・・と、いうよりは、なんとなく酸素を補給してくれるような。そんな役割も、本にはあると思うのです。(さいとう)〟


さいとうかこみ さんについてはこちらを。
作品はTOMOSONLINEでも取り扱っています。

和田祐子さん『Touch the core ものの深奥に触れる』部分
和田祐子さん『Consider improvisation 即興の考察』部分

出品されている作品について、和田さんよりコメントをいただきました。

Touch the core ものの深奥に触れる』〝2016年、モランディの展覧会場で彼の言葉があり、「重要なのは、物事の深奥に、その本質に、触れることだ。」幾度も反芻し長い時が経つ。20年ほど前の文字のworkshopで蜜蝋との縁が繋がり、歴史を遡るうちに古代ギリシャ・ローマ文明、ポンペイの蝋板や中世写本のべラムに辿り着く。なぜ制作に蜜蝋を素材として使用するかの理由に近づき実感しつつ、自分との関係性を考えるに至る。ものの本質を探る旅に、かかせないひとつの素材でもある。(和田)〟

Consider improvisation 即興の考察』〝今回使用した、ダーニング手法のコラージュの文章内容は、あらゆる分野(アート・音楽・演劇・ダンス・映像ほか)と即興や創造性との関りを説いたもので、自由に楽しむ必然性についても触れたもの。自分にとっての即興・自由・楽しみ・制作のエネルギー・創造性とは何かと、思いを巡らせてページを繋いでみました。(和田)〟

もう1つの出品作『Exists within the circle 円に存在するもの』と合わせて、和田祐子さんの本についてはGallery2TOMOSONLINEでご紹介中です。